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鍼灸治療 鍼灸とその治療法

鍼灸の分類と治療法の紹介のページです。

鍼灸治療とは
国家試験に合格した医師または鍼灸師のみが行える、侵襲的な医療です。
医療類似行為を行う療術師や整体とは異なります。
針やお灸、電気、レーザーなどを利用して体に刺激を与えて自然治癒力を引き出します。
古来からその効果の高さのため、針を刺すという治療法や痛みに対する不安に関わらず広く支持されています。
このサイトの目的は鍼灸治療の種類と内容を明らかにし、情報公開することによって、一般市民の鍼灸治療への不
安をなくすことです。

鍼灸の体系

現在の日本における鍼灸診療の体系は、大きく分けると、
(i)1940〜41年に日本で創作された経絡治療と、
(ii)1956年頃に中国で体系化された中医学(日本では1980代以降に翻訳本が多くでました)、
(iii)1970〜1980年代に盛んになった現代医学的な鍼灸の、三つの診療体系があります。

そのほかにも、大正時代に作られた太極療法(沢田流など)、東洋医学的診療体系に測定機器を用いて
科学的な検証を試みた折衷法、韓国の韓医学などがあります。
それぞれの診療には長所がある反面、問題もあります。

(i)経絡治療の体系

経絡治療は1941年頃に岡部素道、井上恵理氏らが参加した新人弥生会によって創作されました。
古典に基づいて、漢方治療にある方証相対と同様な治療体系、つまり診断から治療までを「以上経絡の
虚実を判断し、治療方法(補寫)を決定する」という体系を作成し、確立しました。

治療方法は主に「難経」「素問」などを参考にして、本治法と標治法に分け、本治法は経絡の変調を調整する
目的で手足の要穴に補寫の法を施し、標治法は病める部位の苦痛を除去するために施術する方式としました。

経絡治療の体系が日本の鍼灸界に与えた影響は大きく、明治時代の法改正以後の鍼灸における西洋医学化や
圧痛点療法といったアンチテーゼ的な役目を果たしています。なお、経絡治療は日本独自の診療体系であり、
中医学体系とは用語は共通ですが、用語の概念や診療体系が異なります。

EBM: Evidence-based Medicine(根拠に基づいた医療)が確立できず、施術者の能力によって効果が左右されます。
技術を伝達しにくく、他の術者による再現性が低いという問題点があります。人体への侵襲がほとんどなく、即効性が
あり満足度が高い治療法です。信頼できる能力のある施術者をさがすのが難しいのが難点です。
不安障害など精神疾患に著効がありますが、施術者の能力により、疼痛疾患への効果が薄いことも多くあります。
日本的な職人技の鍼灸治療法です。


 治療(例)咳(せき)
咳そのものを治療するのではなく、臓腑の虚(体のバランスの崩れ)を探して、本治法により補ってバランスを取ります。
続いて、標治法により現在体に出ている症状の緩和を計ります。その結果、全身の症状とともに咳が治ります。

(ii)中医学の体系

中医学の体系は、1956年頃より中華人民共和国において体系化されたもので、中国伝統医学を中医学といいます。
その土台は清時代の西洋医学と伝統中国医学を折衷した学派によるものとされていますが、実際は文化大革命により
安価な治療法として毛沢東の指示で編纂されたものであり、日本の沢田流などの影響を強く見受けられます。

日本では1970年代から徐々に輸入され、1980年代の後半頃には一つの治療体系として定着し始めました。
特に中医学の導入が盛んになったきっかけは漢方製剤の普及が大きく、医師が湯液を学ぶ上で、経験的な学問体系の
漢方医学よりも、理論的に整理された中医学を学び始め、その頃から中薬の翻訳本も多くなりました。
そして、1990年代になってようやく鍼灸に関する中医学の書籍も増加しました。

中医学が経絡治療体系と異なる点は、中薬が中心であり、理論的に整理し、学びやすくしている点です。
中華人民共和国では、中国伝統医学と現代医学を組み合わせるように中西医結合を行っていますが、日本では教育制度や
医療制度、経済状態などに中国と大きな違いがあるため、安易に結合や融合はできません。

日本では最近、鍼灸師の教育機関で中医学を導入する学校が多くなり、国家試験にも出題されるようになりました。
また、欧米にも盛んに輸出されていて、世界的にも伝統中国医学といえば、中医学を示すようになりました。

中医学を世界文化遺産に登録しようとしたり、国際ライセンスを提唱したり、鍼灸や経穴を中医学で統一しようという政治活動も
盛んにおこなっています。

ところが現在の中華人民共和国では経済が発展してきて西洋医学を多く取り入れたため、大学でも中医学を軽んじるようにな
り、漢方医典籍は選択科目となり、西洋医学と英語の勉強ばかりで、実質、3000軒ある公立中医病院は西洋医学の病院になっ
てしまっています。そのため、古典を軽んじ中医学の根本である、「四書五経」の「易経」を否定し、中医師も黄帝内経を読まない人
が増えています。すでに実際に証をたてて湯液を処方できる中医師は一割にすぎないともいわれています。

6年制の韓医大学を多数持ち、2006年10月に先んじて世界文化遺産に「東医宝鑑」韓医学を登録しようとしている大韓民国の政治
活動に比べると、国内で中医学廃止論議が高まったり、実際には古典をおろそかにしていることもあり、不利な状況です。
このままいくと1990年代に成立したばかりの韓医学が世界文化遺産になり東洋医学の本家となってしまいます。

比較的ランダム化二重盲試験が行いやすく、EBM: Evidence-based Medicine(根拠に基づいた医療)がある治療法もありますが、一
定以上の水準の施術者を確保するのが難しく、再現性に難があります。また、中医学の理論上有効でも否定的なエビデンスがある
ものもあります。即効性のない治療法も多く、根気強く通わないといけません。

治療(例)咳(せき)
咳の原因を熱によるものか、冷えによるものか、乾燥によるものか、水気が多いためのものか、どういう種類の咳かを分析し、
湯液(薬)を処方したり、肺の経絡に鍼灸治療を加え、肺を治療します。

(iii)現代医学的鍼灸治療の体系

現代医学的鍼灸、現代医学的治療、現代医学診断体系などといわれています。
その出発は明治末期の「鍼術灸術営業者取締規則」の交付時期の前後で、医学者による鍼灸研究が盛んになり始めたころに
あたります。

当時の政府の方針(西洋医学の基礎医学を土台に東洋医学の治療方法を組み合わせる方針)と、鍼灸治療の効果を検証する
ために科学的な研究を行うようになったことにより、新しい鍼灸治療体系ができるようになったといわれています。

この法改正により鍼灸の科学化が進み、大正時代から昭和初期に多くの鍼灸に関する科学的業績を残すことになり、終戦直後に
マッカーサー司令部から鍼灸施術禁止の要望が出されたとき、鍼灸の治効に関する研究業績により科学的根拠を示すことができ、
禁止を免れる大きな一助となりました。

その後、西洋医学の疾病名による鍼灸治療がすすみ、現代医学的治療は一つの鍼灸の診療体系となりました。
そして1970年代以降に針麻酔の研究が盛んになった頃に隆盛期が訪れ、現在に至っています。

現代医学的鍼灸治療は前述したように西洋医学が基盤になっていて、鍼灸治療の効果を科学的に立証するために有用な診療体系
になっています。また、用語も現代医学的用語を用いるために、概念も明確で、初学者や西洋医学関係者にとって理解しやすい面を
持ちます。

ランダム化二重盲試験が盛んに行われ、手技それぞれにEBMが確立しやすく、一定以上の水準の施術者を確保するのが容易であり、
再現性もあり、医療機関で大規模に採用しやすい鍼灸治療法です。

ですが、現代医学定期鍼灸治療は物理療法の一手段という側面が強く、痛み以外の愁訴、たとえば自律神経失調症の不定愁訴や
障害部位が特定できない場合の診療に問題があります。現在の医療体制に適合しやすい面があり、鍼灸治療の適応と不適応を鑑別
するために鍼灸教育機関で必須科目として教育されています。一般に侵襲が多いため低い確立で痛みが悪化することもあります。

治療(例)咳(せき) 
専門医に依頼します。

(iiii)通俗的な鍼灸臨床の体系

通俗的な鍼灸臨床の体系とは、先に記した体系に全く属さず、鍼灸の治療にかかわらず多種の治療法を用い、鍼灸も合わせて行う
治療体系です。ある面で症状や病態を問診や触診で判断する点や、障害部位に適した治療を行う点は現代医学的な診療体系に類
似しますが、理学的検査などを行わない点や、現代医学的な病態把握に基づく診断を行わないなど、基本的な診察体系を持ち合わせ
ていないのが特徴です。治療効果は施術者の経験、能力に大きく左右されます。

特に時代を問わず、基本的な診療体系を持たない臨床家が多く、これを通俗的な鍼灸臨床の体系とい分類するしかないのが日本の
鍼灸界の現状です。いわゆる圧痛点治療(反応点治療)といわれるものがこれに属すると考えられています。

特効穴治療などはランダム化二重盲試験がしやすくEBMが確立された治療法も多いのですが、EBMを知らない施術者が多いのが実状
で、ほとんどが個人の経験や勘に基づく治療法になります。

治療(例)咳(せき) 
首の付け根や背中にお灸や鍼をすることもあります(特効穴治療)。光線やホットパックで暖めることもあります(光線療法、温熱療法)。
指先や背中から血を抜くこともあります(瀉血)。背中や胸をさすったり、揉んだりすることもあります(摩擦、マッサージなど)。

鍼灸治療家になるためには

6年制の医学部を卒業後、国家試験に合格し医師免許を取るか、3年制の専門学校を卒業後、国家試験に合格し、はり師、きゅう師免許
を取るか、4年生の鍼灸大学在学中の三年生で国家試験に合格して免許を取る必要があります。

はり師、きゅう師免許の問題点

2000年には鍼灸学校は13ほどしかなく、競争率も高く優秀な学生が集まりました。学校も国家試験は特に学生に対策させることなく、
臨床実習や治療法の勉強に重点をおいていました。 
厚生労働省の方針でここ数年で60を超える専門学校が乱立し、自習で十分合格できる能力のある学生が集まらず、専門学校で臨床的
な勉強を行わず、国家試験対策で座学ばかりしているところが増えました。
そのため、何の訓練も施されていない、効果のある鍼灸治療のできない新米鍼灸師が大量養成され各医療機関に就職し、鍼灸治療へ
の信頼を損なっています。

急激に学校を増やしたため、新設校では資格を持った教員も不足し、学校の改革は困難な状況です。
新米鍼灸師はまず、各地方の鍼灸師会の研修会か、開業鍼灸師のもとで臨床を3年は学んで頂きたいと提言します。

鍼灸治療の健康保険取り扱いについて

健康保険では神経痛、頸腕症候群、頸椎捻挫後遺症、腰痛、五十肩、リウマチ、及びそれらに類似する疾患が対象になります。
鍼灸治療で保険を使うためには医師の同意を得る必要があります。

この医師の同意を得るのが困難なのと、事務作業の繁雑さのため、多くの鍼灸院では保険を取り扱っていません。
鍼灸治療という優れた治療法を気軽に受けるためには、この健康保険取り扱いの煩雑さを改善する必要があります。

参考文献: 「鍼灸臨床の科学」医歯薬出版株式会社 2000年  監修/筑波技術短期大学学長 西條一止 名古屋大学名誉教授 熊澤隆朗  

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